人身損害の項目
以下に、人身損害の賠償を請求する際の一般的な項目を列挙します。
これを見ていただければ、損害の範囲は症状固定時期が基準とされていることがよく分かると思います。
①治療費
原則として、症状固定日(治癒日)までの治療費が賠償されます。
なお、通常は、医療機関が保険会社に直接請求をし、これを保険会社が被害者に代わって支払ってくれます。
②通院交通費
原則として症状固定日(治癒日)までの通院にかかった交通費が賠償されます。
バス・電車などの交通費は通常問題なく認められますが、タクシー利用については必要性がないとして認められないことがあります。
なお、自家用車による通院の場合、一般的に1kmあたり15円のガソリン代が賠償されます。
③付添看護費(入院)
被害者の入院期間中に付添人が必要と認められる場合に認められることがあります。
④入院雑費(入院)
通常入院1日あたり1500円程度が認められます。
⑤休業損害
休業損害とは、交通事故の受傷のために仕事ができなくなったり、または就労能力に制限が生じて収入が減少したことについての損害をいい、原則として症状固定日までの減収分が賠償されます。
しかし、現実に収入減がなくても、有休を取得して通院をしたり、本来の勤務時間外にまで仕事をしたような場合に休業損害が認められることがあります。
なお、休業損害の額の計算は、原則として、事故前直近3ヶ月の給与を基準に日割計算して算出します。
⑥休業損害とは、交通事故の受傷のために仕事ができなくなったり、または就労能
力に制限が生じて収入が減少したことについての損害をいい、原則として症状固定
日までの減収分が賠償されます。しかし、現実に収入減がなくても、有休を取得し
て通院をしたり、本来の勤務時間外にまで仕事をしたような場合に休業損害が認め
られることがあります。
なお、休業損害の額の計算は、原則として、事故前直近3ヶ月の給与を基準に日
割計算して算出します。
入通院期間等に応じて支払われる慰謝料です。詳細は後述いたします。
⑦後遺障害慰謝料
後遺障害の程度等に応じて支払われる慰謝料です。詳細は後述いたします。
⑧後遺障害による逸失利益
後遺障害の程度等に応じて、将来収入の減少分として支払われる賠償金です。詳細は後述いたします。
入通院慰謝料について
交通事故事件では、被害者に生じた精神的損害、すなわち慰謝料額は、症状固定日までの入通院期間によって計算され、その期間が長いほど慰謝料額は多くなります。
しかし、その金額については、注意が必要です。というのも、保険会社(自賠責保険及び任意保険会社)が提示する入通院慰謝料の基準額は、裁判所が基準としている慰謝料の基準額よりも低く設定されており、保険会社は、弁護士が代理して交渉した場合には裁判所が用いる慰謝料額を基準としますが、被害者本人が直接交渉した場合には当然のように保険会社の基準とする慰謝料額を提示するからです。
そのため、裁判所基準の慰謝料額がどの程度であるかという点については、弁護士に相談するなどして把握しておいた方がいいでしょう。
なお、例を挙げますと、裁判所の基準では、他覚症状がある傷害の場合、通院6ヶ月で116万円程度、ムチウチなど他覚症状のない場合であっても通院6ヶ月で89万円程度の慰謝料額が基準とされております。
後遺障害慰謝料について
上述の通り、自賠責損害調査センター調査事務所によって後遺障害が認定された場合には、認定された等級に基づいて後遺障害に対する慰謝料(保険金)が支払われます。
なお、ここでも、保険会社の慰謝料の基準額と裁判所の基準額は異なります。
そのため、この場合、自賠責保険から後遺障害に対する一定の慰謝料(保険金)の支払を受けたあと、裁判所の基準額に満たない部分があればこれを相手側の任意保険会社(任意保険会社がない場合は加害者本人)に賠償請求していくことになります。
それぞれの後遺障害等級ごとの慰謝料額(自賠責保険から支払われる金額及び裁判所の基準額)は以下の通りです。
後遺障害等級 |
自賠責保険金額 |
裁判所基準額 |
第1級 |
3000万円~4000万円 |
2800万円 |
第2級 |
2590万円~3000万円 |
2370万円 |
第3級 |
2219万円 |
1990万円 |
第4級 |
1889万円 |
1670万円 |
第5級 |
1574万円 |
1400万円 |
第6級 |
1296万円 |
1180万円 |
第7級 |
1051万円 |
1000万円 |
第8級 |
819万円 |
830万円 |
第9級 |
616万円 |
690万円 |
第10級 |
461万円 |
550万円 |
第11級 |
331万円 |
420万円 |
第12級 |
224万円 |
290万円 |
第13級 |
139万円 |
180万円 |
第14級 |
75万円 |
110万円 |
後遺障害による逸失利益について
また、後遺障害が認められた場合には、当該後遺障害によって被害者に生じるであろう症状固定日後の逸失利益(原則として将来の収入の減少分の損害)が認められます。
しかし、将来にどの程度の収入減が生じるかは明らかではないことから、逸失利益の額は、後遺障害の等級に従い、一般的に以下のような計算式によって導きます。
【計算式】
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数
非常に聞き慣れない用語がたくさん登場しますが、簡単に説明しますと、被害者の方の年収のうち後遺障害によって生じる喪失分を求め、その喪失が生じ続けるであろう期間分(実際はその期間から利息を控除した分)を合算する訳です。
そして、この労働能力喪失率は、認められた後遺障害の等級によって以下のように一律に定められています。
後遺障害等級 |
労働能力喪失率 |
第1級 |
100% |
第2級 |
100% |
第3級 |
100% |
第4級 |
92% |
第5級 |
79% |
第6級 |
67% |
第7級 |
56% |
第8級 |
45% |
第9級 |
35% |
第10級 |
27% |
第11級 |
20% |
第12級 |
14% |
第13級 |
9% |
第14級 |
5% |
人身損害のまとめ
このとおり、それぞれの損害項目に対する賠償金は、症状固定日を基準としてその金額が導かれるわけです。
なお、被害者の方の個別事情によって、ここで挙げたもの以外についても賠償が認められることがありますので、まずはご相談されることをお勧めします。
過失相殺
最後に、当該交通事故の発生について、被害者にも落ち度(これを「過失」といいます)があった場合には、賠償金額の総額から、その分が減額されます。
これを「過失相殺」といいますが、ここで減額される割合にも一定の基準があり、その結果、例えば2割の過失があるとされればその分が減額されます。
ここで、その基準を全て説明することは難しいので、その点については個別にご相談を頂いた際に説明をさせていただきたいと思いますが、相手方の保険会社はその基準を出来る限り相手方に有利に解釈しようとしますので、この過失割合については争いが生じることが多いといえます。