労働災害(労災)とは
はじめに
労災とは、 業務中または通勤中に生じた原因による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等の労働災害をいいます。
労働災害に被災した場合、労働者はまず労災保険の保険給付申請を検討します。一般に労災と言うと、 この労災保険の保険給付を指すことが多いです。
しかし、後遺症などが残る重大な労働災害の場合には労災保険の保険給付のみでは十分な補償とはいえません。
労災に被災した原因に事業者の責任がある場合には、労働者は事業者に対して、損害賠償請求を行っていくことが可能です。
事業者に対する損害賠償請求は労災保険の保険給付では補償されない部分についても行うことができるので、 被災労働者やその遺族にとっては、今後の生活保障のため、非常に重要です。
当事務所では、労災保険請求及び事業者に対する損害賠償請求事件について、 特に力を入れて相談・受任を行っております。
以下では、労災保険制度の概要と事業者への損害賠償の方法 について解説をしておりますので参考にしてください。
労災保険制度の概要
労災給付の内容
労災保険は労働災害に被災した労働者またはその遺族に対し、所要の保険給付を行い、被災した労働者や遺族の生活を助けるための制度です。
労災保険の対象となる主な給付は、療養給付(労働災害の治療に要した費用)・休養給付(労働災害により働けない休業期間の賃金相当額)・障害給付(労働災害により障害が残った場合の障害給付金)・遺族給付(労働災害により労働者が死亡した場合の遺族給付金)などです。
もっとも,休業給付は賃金の6割(特別給付金を含めると8割)しか給付の対象とならず、障害給付・遺族給付なども生じた損害の全額が補償されるわけではありません。
したがって、労災保険は被災労働者の今後の生活の補償という意味では必ずしも十分な補償とは言えません。
また、労災発生に事業者の責任が認められる場合には、事故に対する慰謝料を請求できることになりますが、慰謝料などは労災給付の対象とはなりません。
そこで、労災保険給付を受ける際には、労災保険では補償されない範囲をしっかりと把握し、その填補を事業者や第三者に求めるべきかをよく検討すべきです。
労災保険対象外の項目
たとえば、労災保険対象外の項目としては、①休業給付(原則として6割を超える部分)、②慰謝料(補償の範囲外)、③障害給付。遺族給付(一定額に限定)、④諸雑費(原則として補償の範囲外)などがあります。
労災保険が適用される要件
労災保険給付をうけるには、当該労働災害が「業務上の事由」にもとづいて生じたものであることが必要です。
例えば、プレス工場でプレス作業中に指を切断してしまったような場合には、当該事故が「業務上の事由」にもとづいて生じたものであるとして、労働災害と認められる場合が多いと思われます。
また、腰部に負担がかかる業務を長期間にわたって従事してきた労働者が椎間板ヘルニアを患ったような場合には、いわゆる職業病として、当該椎間板ヘルニアは「業務上の事由」にもとづいて生じたものであるとして労働災害が認められる可能性が高いです。
一方で、出張中にたまたま出張地の催し物やお祭りを見学するなどした際に事故に巻き込まれてしまった場合には「業務上の事由」とは認めらず,労働災害と認定されない可能性が高いです。
また、会社の運動会や宴会などの行事に出席中の災害は幹事など出席義務を有するもの以外は原則として「業務上の事由」とは認められず,労働災害とは認定されない可能性が高いです。
上記のように「業務上の事由」の認定は様々なパターンがあります。認定基準について、厚生労働省からも多くの通達が出されていますが、やはりケースバイケースであるため、その判断は容易ではありません。
したがって、ご自身の負傷や疾病が労災にあたるのか疑問がある場合には、独りで悩むことなく、専門家に相談すると良いでしょう。。
労災認定に関する最近の問題(労災隠し)
労災隠しとは、職場で発生した労働災害を事業者が意図的に隠そうとしたり、虚偽の報告書を提出したりする事です。
法律上、事業者には労働災害について労働基準監督所長に報告する義務があります。したがって、報告を怠ったり、虚偽の内 容の報告を行った場合には法律違反となり、罰金が科せられます。
無災害記録を保持するためや会社への責任追及を逃れるためなど、労災隠しが行われる原因は様々です。
しかし、労災隠しを許してしまうと、労災給付による休業補償や解雇の制限などの労働者に有利な規定が適用されず、被災労働者は大変な不利益を被ってしまいます。ですから、労災隠しは決して許してはいけません。
労災はアルバイト・パートを問わず、全ての労働者が保険の対象となります。
また、事業者が労災に入っていなかったとしても、労働者は保障を受けることができます。
労災隠し?と疑うような対応を会社が行ってきた場合には、すぐに労働基準監督署に相談すべきです。
当事務所も労災隠しに関して、積極的に相談・受任しておりますので、ご相談ください。