遺産分割に関する相談の詳細

はじめに

相続法の改正

相続法については,民法の一部改正法と「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が2019年7月13日にが交付されており、2019年1月13日以降に順次施行されることになっていますが、以下の説明は、改正前の相続法に基づく説明となります。

相談例

父が亡くなり、父の財産を母と私と弟で相続することになりました。父の遺産には、自宅の土地・建物(時価総額1000万円)のほか、現金が1000万円、借金が400万円あります。父の遺言などはありません。

これらの遺産を家族で分ける場合、どのように行えばいいでしょうか。そのときに注意すべきことはありますか。

相続について

相続の基礎知識

亡くなられた方の残した遺産を受け取ることを相続といい、相続を受ける人を相続人といいます。

相続は、預金などのプラスの財産のほか、借金などのマイナスの財産についても相続人に承継されます。

相続人になる人

まず、被相続人の配偶者は常に相続人となります。

そのほか相続人となる者は民法に優先順位が定められており、以下の優先順位に従って決まります。

①第1順位の相続人
被相続人の子(実子及び養子)、孫(子が既に亡くなっているとき)

②第2順位の相続人(第1順位の相続人がいないとき)
被相続人の父母、祖父母(父母が既に亡くなっているとき)

③第3順位の相続人(第1、第2順位の相続人がいないとき)
被相続人の兄弟姉妹、兄弟姉妹の子(兄弟姉妹が既に亡くなっているとき)

法定相続分

①配偶者と第1順位の相続人がいる場合
配偶者と第1順位の相続人はそれぞれ2分の1ずつ

②配偶者と第2順位の相続人がいる場合
配偶者は3分の2、第2順位の相続人は3分の1

③配偶者と第3順位の相続人がいる場合
配偶者は4分の3、第3順位の相続人は4分の1

また、配偶者がいない場合は、同順位の者の人数に応じて均等に分かれます。

したがって、表題の【相談例】の事例ですと、相談者の母が2分の1、相談者と相談者の弟がそれぞれ4分の1ずつ相続分を有することになります。

相続するか否かの選択

このとおり、被相続人がお亡くなりになった後、相続が開始されるわけですが、相続人は被相続人の遺産及び負債を相続をするかしないかについて決定することができます。

これを相続の承認及び放棄といいますが、これは自己のために相続の開始があったことを知ったときから(通常は被相続人が亡くなったことを知ったときから)原則3ヶ月以内に行わなければならないとされています。

ここで注意すべきは、上に述べたように、相続はプラスの財産だけではなくマイナスの財産、すなわち被相続人が負っていた負債についても相続されるということです。

そのため、相続の開始を知ったら、早い段階で被相続人のプラスの財産及び負債について調査することをお勧めします。

なお、相続の承認をする場合でも、相続の承認には以下の2種類の方法があります。

①単純承認
プラスの財産の額及び負債の額に関わらず相続の承認をする方法

②限定承認
相続によって得たプラスの財産の限度においてのみ相続の承認をする方法

遺産分割について

遺産分割の基礎知識

相続の開始によって、まず、被相続人の財産は相続人の共同所有財産となります。

遺産分割とは、その共同所有財産の全部又は一部を、相続人間の話合い、または調停・訴訟などの手続きを経て、それぞれの相続人の単独所有もしくは相続人間の新たな共有関係に移行させる手続のことです。

なお、負債については、遺産分割の対象とならず、法定相続分にしたがって当然に分割されます。

したがって、表題の【設例】の事例ですと、相談者の母が200万円、相談者及び相談者の弟がそれぞれ100万円を相続することになります。

遺産分割が必要な理由

相続の開始と同時に、被相続人の遺産は相続人に自動的に移転します。その際、不動産などの当然に分割することができない遺産は、相続人間の共同所有関係が生じていることになります。

共同所有関係がある財産については、共有者の持分の価格に従い過半数の同意が無ければ管理行為ができず、また、共有者全員の同意が無ければ共有物に変更を加えることができないなど、様々な制限が生じます。そこで、これらの不都合を回避するために、各相続人に確定的に帰属させる手続が必要となります。

また、遺産分割をしておかないと、遺産の帰属について後に紛争が生じたり、遺産が散逸したりする危険があります。そのような危険を防ぐためにも、早い段階で遺産分割をしておいた方がいいといえます。

遺産分割の方法

まず、遺産分割に関しては、相続分と異なる分割をすることも可能です。しかし、協議で遺産分割を行う場合には、相続人全員一致で決定しなければなりません。なお、遺言がある場合も、これと異なる分割をすることは全員の同意があれば自由です。

次に、遺産の分割の方法には以下のような方法があります。

①現物分割
遺産をそのまま分割する方法で、原則的な方法です。土地は誰々に、株券は誰々に、という分け方や、預金を3分の1ずつ分けるなどの方法をいいます。
表題の【設例】の事例であれば、相談者の母が土地建物を取得し、相談者及び相談者の弟が現金を500万円ずつ分けるなどの方法がこれにあたります。

②代償分割
現物分割が困難であったり、細分化しては価値が無くなってしまうという財産もあります。そこで共同相続人の一人に現物を取得させるとともに、その一人が他の共同相続人に対して相当の金銭を支払う方法です。
表題の【設例】の事例であれば、相談者が土地建物を取得する代わりに相談者の母に500万円を支払い、相談者の母と相談者の弟とで現金を500万円ずつ分けるなどの方法がこれにあたります。

③換価分割
遺産を売却してその代金を共同相続人で分けるという方法です。
表題の【設例】の事例であれば、土地建物を1000万円で売却し、現金と合わせた2000万円について、相談者の母が1000万円、相談者と相談者の弟が500万円ずつ分けるなどの方法がこれにあたります。

④共有分割
全部あるいは特定の遺産について相続人間で共有するという方法です。
表題の【設例】の事例であれば、土地建物を相続人3名で共有し、1000万円の現金について、相談者の母が500万円、相談者と相談者の弟が250万円ずつ分けるなどの方法がこれにあたります。

これらの方法によりどのように遺産を分割するかという点について、相続人間で話合いがまとまれば、遺産分割協議書を作成することになります。

なお、協議書は必ず作成しなければならないわけではありませんが、その後の紛争を予防するために作成
しておくことをお勧めします。また、不動産の登記の変更をする際にも遺産分割協議書の添付が必須ですので、遺産に不動産が含まれているときは必ず作成しなければなりません。
                              

話し合いがまとまらない場合

話合いがまとまらなかった場合または話合いができない場合には、家庭裁判所に調停または審判を申し立てることができます。

通常はまず調停を申し立て、話合いでの解決を図り、それでも話合いがまとまらない場合には、審判によって裁判所に判断してもらうことになります。

まとめ

おわりに

お客様から寄せられる相続及び遺産分割に関するご相談のうち、類型的に多いものとして、
(1)相続開始から3ヶ月以上が経過してから被相続人の負債が判明したとのご相談や相続放棄後に被相続人に財産が見つかったというご相談
(2)遺産を相続人の1人が管理しており、どのような財産がどの程度存在するのかわからないといったご相談
(3)相続開始後、相続人の1人が他の相続人の許可なく財産を費消していることについてのご相談
(4)被相続人の介護を行っていたなど被相続人の財産の増加ないし維持に貢献してきたことに関するご相談などがあります。

このような場面に遭遇された場合はもちろんのこと、そのほか何かお悩みのことがございましたら、お1人で悩まずにまずは当事務所までお気軽にご相談ください。

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